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配布物



こちらは私がちょろっと改良を加えたデータを配布する場所になります。
当然ですが、権利等は配布元さんにあります。
そして使用の際は自己責任で。
また、判らない事はいつでもお気軽に訊いて下さい^^

~「続き」 に格納しているデータの一覧~

●VerticalEditorのスタイル&書式設定
●関西弁Windowsを使って静留さんにナビゲートして貰う方法
●ふうかたいせんパッチ
●HiME&乙HiMEのBD Complete Boxで使用されたCMボイス

※現在うp先がセキュリティ証明書と言うものを更新し忘れてるか何かで
安全を保障出来ませんみたいな表示が出ていますが
怪しいサイトを使っている訳ではないので大丈夫です。
なので欲しい人は恐らく下の方に表示されている
「それでもアクセスしますか?」
みたいに書かれてる部分をクリックしてアクセスするか
不安な方はミラー版からどうぞです!

(パスワードは変えていません)

では、続きからどうぞ!


続きを読む »

春嵐ランサー45



取られたくないのか、なんてそんな思わせぶりな言葉を
さらりと言ってくれたなつきに対して
つい目元を引き攣らせる程露骨に驚いてしまった静留であったが
次の瞬間にはほぼ無意識の内に表情を取り繕いながら
張り付きそうになる喉を必死にこじ開けて慎重に訊き返した。

「急に、なんですのん?」

何故そう思ったのか問い質すのは怖くて
咄嗟に出て来た言葉にのみツッコミを入れたのだが
案の定鈍いなつきがそれに気付く事はなかった。
しかも静留が浮かべている笑顔の硬さと歪さにも気付かないまま
平然とした面持ちを向けて言葉を返す。

「急に、と言うか……お前、矢立さんにずっと対抗心みたいなの抱いてただろ?
だからそんなに私の事がお気に入りなんだなーと思って」
「…………それは、否定しませんけど。
うち、そんなにあからさまやったやろうか」
「お前の事を知っている奴なら誰でも判ると思うぞ。
普段とのギャップが凄かったからな」
「そう、どすか……ほんまに屈辱やわ。
京都の二十面相と散々恐れられたこのうちがそんな失態を犯すやか」
「お前本当に変な二つ名ばっかり持ってるよな……」

なつきはそう言って呆れた風に軽く笑った。
その横顔を見て、静留は密かにほっと胸を撫で下ろす。
けれど矢立に対抗心を抱いていた事は判っていたのに
肝心な自分の気持ちを全く汲み取ってくれない事にやきもきしてしまって
思わず丸い頭にこつりとおでこを当てた。

「うちが快く思ってへんと判ってたんやったら
なんであの人の事を遠ざけてくれへんかったんよ」
「え……いや、だって、リハビリの担当だぞ?
特に何かされた訳でもないのに、チェンジしてくれなんて言えないだろう」
「それはそうやけど……やけに親しくする事はなかったやない」
「やけって、私はあくまでも普通に話してただけなんだが。
と言うかなんで其処まであの人の事を毛嫌いするんだ?」

なつきは大事な時程相手の顔を、取り分けて目の焦点をしっかりと見据える。
それは生来の生真面目さから来る癖なのだが
馬の感情を読み取ろうとする内により強固に根付いており
静留になんとも言えないプレッシャーを与える。
何しろなつきとは真逆に大事な時程笑顔を見せて
目を瞑って来たのが藤乃静留と言う人間だ。
故に何も取り零すものかとばかりに
真っ直ぐ見詰めて来る純朴な瞳にじっとりと嫌な汗を掻いてしまう。
だけど此処で目を逸らしてしまえば
何かやましい事があるのではないかと勘繰られそうで怖いなと
反射的に自分基準で考えた静留は視線はおろか顔を背ける事も出来なくて
なつきを直視したままその瞳孔を一頻り小刻みに震えさせると
いよいよ矢も盾も堪らなくなったのかなつきをいきなりふわっと抱き締めた。

「えっ!? ちょ、いきなりな」
「別に嫌いな訳やないんよ。
ただあんたはうちのもんやからね、他の人に横取りでもされたら敵わへんのよ」

顔を見させず、歌うような口調で述べれば誤魔化せる筈。
追い詰められた結果そんな短絡的な選択をした静留は
言わずもがな完全に引き攣った笑みを浮かべている。
と、その時だった。

「お前……そんなに私を疑ってるのか?」
「はい?」

なつきは何馬鹿な事を言ってるんだと突き放され
お前は相変わらずボディランゲージが多過ぎるんだと照れた顔で呟く。
そしたら 「ドキッとしました? かわええなぁ」 なんて言って
赤いほっぺをつんつんとつつけば
この話題はさっさと流れていくものだとばかり静留は考えていた。
しかし実際に返って来た言葉は予想外のものだった上に
子供が拗ねた時のように非常にぶすっとした声で形作られていて
静留はまさかのリアクションに驚いて思わず丸くする。
その刹那、見るからに不服そうな顔をしたなつきと目がばちんとかち合った。

「私が恋をしたら、現を抜かすと思っているんだろう。
だがそれはあまりに間違った認識だ。
仕事を疎かにするつもりはこれっぽっちもないし
ましてやそれで勝率を下げるなんて騎手として絶対に許せない事だからな。
そもそも今の私に、恋をしている時間も余裕もない。
だからお前も余計な心配なんてせずに、堂々と私を応援していればいーんだっ」
「ぁ、はい……」

どうやらなつきは、別のベクトルで憤っていたらしい。
強い語気に気圧されて反射的に頷いてしまった静留だが
すぐにまたドキッとするような事を言ってくれちゃってと
頭の痛い思いをしながら噛み付きたくて堪らなくなる。
まぁいくら思った所で絶対に言わないし
例え口に出したとしてもとことん鈍いなつきが気付くとは思えないが。
それに実際今のなつきに恋愛事は邪魔なだけだ。
ただでさえ復帰やライバルの事でいつも以上に余裕がないと言うのに
其処に自分への恋愛感情を芽生えさせてしまえば
キャパオーバーでどうなってしまうか判らない。
マルチタスクが得意な訳でも仕事と私情を完全に割り切れないからそれは尚更で
これ以上自分の所為で追い詰めるような事はしたくないと考えるのは
恋する乙女としてもそうだが単純に人としても当然だ。
しかし人だからこそ、つい思ってしまう。

「でも……いつの間にか落ちてしまうんが恋やからなぁ」

一目惚れにしろ徐々に好きになっていくにしろ
気付いた時には落ちているのが恋である。
なつきと出逢った事でついにそれを知った静留は
半ば無意識の内にしみじみとそう呟いてしまった。
勿論すぐに自分の発言の迂闊さに気付いてハッとしたが
相手は鈍いにも程があるなつきである。
この程度なら問題ないかと考え直して瞳を細めた瞬間
思わぬ所で情感のある姿を目の当たりにする事となったなつきが
若干きょとんとした面持ちをして 「そう言うものか?」 と問うて来た。
明らかに単純な疑問として訊ねている事に加えて
なつきの鈍さはもはや称賛に価する程のものである。
だから静留は一切動ずる事なく落ち着きのある笑顔を浮かべて頷いてみせた。

「ええ、そうどすえ。
しかもその所為で気付いた時にはもう手遅れやからなぁ……
誰かを好きになるって言うんはほんまにままならへんくて敵わへん事ばっかりや」
「なんか、妙に実感が籠った言い方だな。
もしかして今、誰かに恋をしていたりするのか?」
「……そうやて言うたら、今度はあんたがうちに嫉妬してくれはるん?」
「えっ」
「ふふ、なんてなぁ。
ほなうちはこれから仕事があるよって、今日はこれで失礼しますな」
「は? ちょ、ちょっと、おい」
「また明日もうちが来てあげるさかい、寂しがらんといてな~♪」

流石にこれ以上話すとボロが出そうで危ないなと思った静留は
この後本当に仕事が控えていたのもあって
艶然とねだるような視線を送っていたのがまるで嘘のように
のほほーんと笑いながら足早に病室から立ち去った。
そうして置いてけ堀にされたなつきは伸ばした手をどうする事も出来ないまま
だらだらと冷や汗か脂汗かよく判らない汗を掻きながら小さく呟く。

「……え、え、いや、え? まさかあいつ……本当に好きな人が居る、のか?」

随分親しくしていたつもりだったのにいきなり自分の知らない新情報―――
それもあの静留が想いを寄せている相手がいるかもしれないと知ったなつきは
不整脈も同然に騒いでいる自分の心臓の音をBGMに
一体誰なんだ私が知っている奴なんだろうかと頭をひたすらぐるぐると巡らせる。
まさか自分がその想い人だなんて、当然のように欠片も思わないまま。



( ゚д゚)ハッ!



皆様、おはようございます。
言い忘れていた事を思い出した為現れた朔夜です。

時々ニコ動を周回してHiMEの動画をチェックするんですが
つい最近また一つ消えてしまっていた事に気付いたので
別の動画も合わせてミラー版を投稿しておきました!





実は下の動画は画質悪いのしか持ってないので
もし高画質なのあったら恵んで下さい_:(´ཀ`」 ∠):

と言った所で本日はこれにて失礼しますね!|柱|д・) ノシ



春嵐ランサー44



仕事があるからと言って矢立が立ち去った後
なつきも早々にリハビリセンターへと向かって行った。
本日から新しい担当となる作業療法士は
真田紫子と言う名前の聖母系の見るからに優しそうな女性で
右目の下に泣きぼくろがあったり胸が大きかったり
むちむちとした肉感的なボディが色気もクソもない制服なのに
どう言う訳か全然隠し切れていなかったりと
ナチュラルな艶が溢れ過ぎて目に毒なタイプである。
しかも左手の薬指には銀色に輝く指輪が嵌められている為に
人によっては更にそそられる事間違いなしのある意味キケンな人物だ。
実際セクハラまがいの事をよくされているようで
矢立を筆頭に他の同僚がフォローに回りつつ
いやらしい目線を向けている光景を頻繁に見掛ける。
酷い場合にはリーダーよりも余っ程頼りになる看護師長に直接連絡が行って
以降自分が担当となって若い看護師と関わらせないようにするので
一部の男性陣からは名前をもじって鬼のミス・マリアと呼ばれているらしい。
ちなみにその性格の厳しさから同僚からも密かにそう呼ばれていたりする。
それだけに静留も以前からその存在は知ってはいたのだが
まさかあの彼女がなつきの担当になるとは……と妙な感慨を覚えつつ
リハビリしているのだから仕方ないとは言え
うらやまけしからん胸があらゆる場所にモニュっと押し付けられ
自分がまだ触れた事のない場所に平然と手を這わせてゆく光景を見ていると
どうしようもなく苛立つのと同時に激しい悔しさにも見舞われる。
しかし同性愛を是としてこれまで生きて来ただけに
女性同士が絡み合う素敵な光景を否定し切れない。
お陰でエロ漫画で一大ジャンルとして認められているであろう
“寝取られているのに興奮してしまう男性” のようになってしまった静留は
色んな意味で鼻息を荒くしつつ本日も遠くからなつきの頑張りを見守った。
その姿はまるで某star of the giantsに出て来る姉のようであり
実際に一部のシニア世代にはそう思われている。
例えば静留をナンパしたあの老爺達がそうだ。
まぁそうは言っても今はミス・マリアに大目玉と同時に出禁を食らい
次見付かったら何をされるか判らないと
すっかり怯えてリハビリセンターに近付けないでいる為
静留にちょっかいを出す事はおろかハァハァしている姿を目にする事もないのだが。
そんな訳でなんとか無事に社会的な死を迎えずに済んだ静留は
いつものように時間を見計らい今やって来ましたみたいな顔をして
リハビリセンターから出て来たなつきの前に姿を現した。

「なーつき、今日もお勤めご苦労様でしたなぁ」
「静留……っふ、なんかそんな言い方されると私の奥さんみたいに聞こえるな」
「ええやない、実際うちはあんたの通い妻なんやし?」
「ぅぐ。 確かにそうだけど、ドヤ顔で言う事じゃないだろ」
「ふふっ、なつきはほんまに照れ屋さんどすなぁー」

明らかに少しからかっただけなのに
妻と言う響きに反応して途端に頬を薄紅色に染めたなつきが可愛らしくて
静留はついご機嫌な声で歌うようにしてそう言葉を返した。
それに対してなつきは事実なだけに言い返せなくて
咄嗟にそっぽを向いてうぐぐと小さく呻く。
なんて事のない反応ではあるが
好きな人の所作と言うのは往々にしてとても愛おしく感じるものである。
だから静留の胸も堪らずキュンっと切ない程に締め付けられた訳だが
しかしその所為で思ってしまう、期待してしまう。

―――こうして反応してくれていると言う事は、脈があるのではないかと。

そんなの、都合の良い幻想だ。
勝手な期待は身を滅ぼすだけだと
今まで数々の女性を弄んで見限って来た自分だからこそ良く判っている筈なのに
恋をしている、と言うだけでこんなにも心が乱される。
なんて滑稽なんだと思ってつい口の端をシニカルに歪ませる静留であったが
こうして割り切れない想いを抱えていると言う事実が
自分の恋は本物だと証明しているようで思わずホッと安堵する。
本当は、ずっと不安だったのだ。
これまで真実他人に想いを寄せた事もなければ信用した事さえない自分が
果たして恋などそんな甘い響きのある感情を持ち合わせているのか、と。
でもなつきが近くに居るだけで胸に熱が灯って、とくりとくりと優しい早鐘を打つ。
視線を向けてくれれば、それで笑ってくれたりなんかしたら、もう十分だ、と思う。
全然そんな事はないのは百も承知だが
でもその一瞬だけは確かにもう何も要らないと心から感じるのだ。
これが好きでなくて、恋でなくてなんなのだろう。
そんな風に安堵する静留は切ない微笑を浮かべながら
なつきの少し後ろを歩いていたのだが
病室に戻るなり不意に立ち止まった事でつられて立ち止まった。

「なつき?」
「うーん……色々考えたんだが、京藤で良いか?」
「……はい?」
「あぁ、さっきの話だ。
お前と矢立さんで食事する事になっただろ?
でも私はキチンとした店には詳しくないし
二人揃って大変な仕事だからあんまり遅くなってもいけないじゃないか。
だから私がリード出来て二人が楽しめるってなったら
競馬場の中にある店で一緒にご飯食べてレース見て
それで解散するのが一番だと思ったんだが……静留はどう思う?」
「どう、と言うか……そもそもほんまに三人で食事会するつもりやったんどすか」
「えっ!?」

色々ツッコミどころはあるが、静留的にはまずソコが一番問題だった。
言わずもがなあの男となつきを挟んで食事会なんて嫌で仕方がないからだ。
しかしまさか馬鹿正直に気持ちを訴える訳にもいかない静留は
自分の印象を落とさない事を大前提に
すっかり混乱してしまっているなつきを丸め込む事にした。

「相変わらずあんたは真面目やねぇ。
今のご時世患者とプライベートで会うのは問題がありますから
まさかほんまに食事会する訳にはいきませんやろ?」
「あ……そ、そうか……そうだよな、社交辞令に決まってるよな」
「多分なぁ……なつきは、残念やったりしますん?」
「そりゃまぁ世話になったからな、ちゃんと礼はしたかった。
でも差し入れって方法もあるし、残念とまではいかないぞ」
「あら、あくまで筋は通さはるんやね」
「何当たり前な事言ってるんだ?」

世話になったら礼をする。
確かにそれはとても当たり前な事だが
なんだかその語り口が礼儀を重んじる堅苦しい武士のようで
静留はそんな所も可愛いなと思わず笑みが零れた。
だけどやっぱり面白くはなくて
包み込むように手首の調子を何気なく確かめていたなつきの肩を抱いた。

「うちはなつきのそう言う律儀なとこ好きやけど……
あんまりそうやって自分の間合いに他の人入れんといてな」
「し、静留?」
「えらい、心配なんよ。
あんたは義理堅いよって、悪い人にソレ利用されへんかなって」
「……なんだろう、物凄く見る目がない奴だって言われてる気がするんだが」
「まさか、うちは大真面目に心配してるだけどすえ。
そやけど矢立さんに気を付けた方がええんは確かやね」
「え、何故だ? あの人は良い先生だぞ?」
「……はあ。 だから、心配なんどす」
「お、おい、なんで其処でそんな大きな溜息吐くんだ。
それに心底呆れた目で私を見るのもやめろ」
「あんたがあの人に全幅の信頼を寄せるんやめてくれたら考えますわ……」
「あからさまにないだろなって思ってる顔だな……
ったく、そんなに私を取られたくないのか?」
「……は、ぃ?」

唐突に思いもしなかった言葉を投げ掛けられて
静留は思わずひくりと目元を引き攣らせた。



春嵐ランサー43



静留が病室を訪れるなり、なつきはまさに喜色満面と言った様子で言った。

「―――見てくれ静留! ついにギプスが外れたんだ!」

当たり前だが本当に嬉しいのだろう。
両手を上げて回復ぶりをアピールするなつきは
今にもくるりと一回転して喜びのダンスを踊り出しかねない雰囲気があって
静留はそのなんとも微笑ましい姿に余計嬉しくなった……が、しかし。

「そう、なんや……良かったなぁなつき」

意外な事に何処か強張った笑顔でそう応えた。
勿論口にした言葉に一切の偽りはない。
しかしなつきが退院する日が近付いていると実感した事で
自らの責任がいよいよ明らかになるのではないか
また追及されるかもしれないと反射的に考えてしまい
思わず恐怖心に駆られたのである。
だが浮かれまくっているなつきがそれに気付く事はなく
地面にぶつかった際に骨折した右手首を摩りながら
もっと頑張って早くデュランに会いたいなぁとしみじみ呟く。
最初は突然相棒が自分を見捨てた事になんでどうしてと慄いていたが
ずっと会えない期間が続いた事でその気持ちが薄れたらしく
最近ではちゃんと元気にしているか確かめたいとよく口にするようになっていた。
其処まで想われている事に静留は少し妬けてしまうが
やはり馬に対してムキになるなんてあまりにも馬鹿馬鹿しい。
いや馬だけに、と言うつもりは全くなく。
そんな静留は出たばかりの競馬新聞を入れた袋を差し出しつつ
改めて綺麗に取り繕った完璧な笑顔をなつきに向けた。

「はい、いつものどすえ。 それとちゃんとしたお祝いは、明日持って来ますな」
「ありがとう。 でもギプスが外れただけだし、お祝いなんていいぞ?」
「うちがお祝いしたいからええんどす」
「っぷ……お前って変な所で意地っ張りだよな」
「……そないな事言われたん、初めてやわ」
「そうなのか?」
「ええ、いつもは恐ろしい女やとか敵にだけは回したくないやか
そんな言われ方ばっかりするもんやから
意地っ張りやなんてかいらしい響きについほんまに驚きましたわ」
「おまえ……これまで一体どんなこと……
あッ、いや、いい、やっぱり聞きたくない」
「うふふ、ご所望とあればいつでもお話しますえ♪」
「やめろッ、私に社会の闇を植え付けようとするんじゃないっ!」

さっきまで本心を隠す為に表情を作っていた静留だが
咄嗟に両耳を塞いで結構本気で悲鳴を上げたなつきを目の当たりにした事によって
今は本当の意味で楽しそうにクスクスと笑う。
とその時、和やかな雰囲気を邪魔するようにノック音が開いた。

「矢立です、今よろしいですか?」
「あ、はいどうぞ」

現れたのはよりにもよって恋敵で
しかもなつきがノータイムで受け入れた事に対して静留は複雑な気持ちを抱く。
一方の矢立も静留を認めるなりにぃっこりと過剰に口角を釣り上げた事から
うわ厄介な人が居たぞーぅとでも思っている事が透けて見えた。
……ただし察したのは静留だけだが。
故になつきはなんの警戒心も抱かないまま矢立へとナチュラルに歩み寄った。

「どうしたんですか?
まだリハビリの時間じゃないし、今日から担当外れた筈ですけど……」
「やだなぁ、担当が外れても見に来ると言ったじゃないですか。
それに僕の元から離れてしまった貴女に
ほんの少しばかりのお祝いと未練をこっそり届けたくって」
「はい?」
「ミニケーキの詰め合わせです♪」

返品不可、ついでに受け取るまで引き下がりません。
矢立はそう言わんばかりの笑顔を浮かべて少し大き目な小箱を差し出した。
それに対してなつきは 「えっ」 と動揺の声を上げて驚き
静留はその後ろで相変わらず微笑を浮かべているが
心の中でらしくもなくチッと舌打ちをする。
状況から鑑みるに、矢立は今日なつきのギプスが取れる事を先んじて知っていた。
だからこうして予め準備していた事に
なんて職権乱用なんだ公私混同にも程があると
完全に自分の事は棚に上げて猛烈に苛立ちを覚えたのである。
しかもそんな静留に矢立は火に油を注ぐように言ってみせた。

「良かったら藤乃さんと一緒にどうぞ。
と言うか実はそれを見越して二つずつ選んだので喧嘩する心配はないですよ」
「あっ、わざわざ気を利かせてくれてありがとうございます。
これは退院したら増々ちゃんとお礼をしないとダメですね」
「ええ、期待していますよ♪」

―――あんたそれが目当てやったんやな!

静留は今すぐそう噛み付いてやりたかったが
嫉妬で顔を醜く歪ませた自分の姿など見せたくはなかったし
何よりなんで其処まで怒るんだと突っ込まれたくなくて
目元が引き攣りそうになる程の感情を笑顔の裏で強引に呑み込んだ。
そんな静留は声に怒りが乗らないよう細心の注意を払いながら
嫣然とした面持ちのまま矢立に向けて口を開く。

「まぁわざわざうちの分まで用意してくれはるやなんて
矢立さんはほんまに優しいお人どすなぁ。
なつき、お礼をする時は是非うちも混ぜておくれやす」
「え、それは別に構わないけど……」
「フフッ、美女に囲まれるだなんて僕は幸せだなぁ。
でも何かとお忙しいんですよね、無理して付き合ってくれなくても良いですよ」
「お気遣いおおきに。
そやけどなつきだけ誘っといてうちだけお断りやか
まさかそんなつもりやありませんやろ?」
「あっはは、嫌だなぁ、意地悪言わないで下さいよぅ」

そう言ってにこやかに笑う矢立であったが
それこそまさかですよと反論したり勿論歓迎しますと言わなかった辺り
お持ち帰り出来そうにないどころか
なつきとの仲まで邪魔するつもり満々な静留を暗に拒絶している事が良く判る。
……いやこれもなつきだけ全く理解していないが。
でもいい加減飛び散る火の粉には気付いたようで
最近顔を顔を合わせる度に何故かピリピリとした緊張感を場にもたらす二人を
なつきは若干おどおどとした様子で交互に見遣った。

「ちゃ、ちゃんと二人一緒に食事に誘うから大丈夫だぞ?」

事態を収拾しようとなつきが堪らずそう述べた瞬間、静留と矢立は同時に思った。
そう言う事じゃないんだけどなぁ、と。
だが当然のようにその思いを口にする筈はなく
二人は揃って生温かい笑顔を浮かべた。

「まあなつきったら、うふふ」
「玖我さんってば本当に無邪気ですよねぇ」
「かいらしい事この上ありませんわ」
「な、なんか二人して私の事ディスってないか……?」
「ふふ、そんな訳ありませんやろ?
むしろうちは、なつきの魅力の一つやと思ってますえ♪」
「ええ、藤乃さんの言う通り貴女はとっても魅力的ですよ、玖・我・さ・ん♪」
「お、おぉぅ……あ、ありがとう……?」

静留に肩をぎゅっと抱き締めながら褒められ
矢立からは手を取られて甘く囁かれた。
なんだかよく判らない内に囲まれて逃げ場をすっかり失くしたなつきは
その事にキョドりつつもありがたく好意を受け取る。
そんな幼い所がまた可愛らしくて堪らなくなるのだと
少女の面影を未だ強く残すにぶちんガールに
二人は必死に表情を取り繕いながら増々滾るリビドーに内心翻弄されるのであった。